2007年7月23日月曜日

Day12─ヘルシンキの一日(ヘルシンキ)

昨日ひどかった風邪症状だが、今日は全快とはいかなくても幾分軽くなってきた。とはいえ、ホテルの朝食時間はぎりぎり、パンとコーヒーに小皿少々の料理で簡単に済ませる。今泊まっているホテルは朝食を売りにしている。確かに、部屋のつくりとは不釣合いなほど料理のほうは充実していた。ホテルの1階にはレストランがあり、宿泊者以外にも開放しているようである。

それとは別に外側にカフェがある。朝食時間が終わると、どこからとなく人が集まり、コーヒーを興じながら歓談を楽しんでいる。カフェが生活の一部として、あるいは文化として確立しているようである。ヘルシンキの町には実にカフェが多い。街角の至るところにあり、その数の多さといえば、(比較的多い東京と比べても)日本の都市の比ではない。ある程度の規模のビルの1階には、ほとんどカフェがあるといってもいいかも知れない。そういえば、世界のどこにでもありそうなスターバックスがこの町では見当たらなかった。この町に滞在したのはせいぜい2日だから、見つけられなかったといったらそれまでだが、これだけ回りにカフェがあるとある種の参入障壁になっているかもしれない。

明日は朝ここを出なければならないから、ここにいるのは実質今日一日だ。(昨日は、風邪のせいで外に出ることができなかったからだ) だが、天気はあまりよろしくない。いまでも雨が降りそうな雰囲気だ。何とか今日一日はもって欲しいと思う。

朝食後、ホテルのまわりを散策したのち、再び部屋に戻り、身支度をして公園に繰り出す。フロントで市内観光のツアーバスが出ていると紹介してもらったところに行く。札幌の大通り公園(実際は行ったことがないので、テレビや写真で見た限りだが)のような公園の一角にジューススタンドと見まがうブースがあり、そこでチケットを買った。15時出発の1時間半のツアーだ。

ヘルシンキは16世紀にスウェーデン人によって交易のために開拓され、以降フィンランドの貿易中継の中心地となった歴史ある街である。しかし、現在残る建物の多くは、1808年の大火以降に建てられた。この大火でより町の3分の2が焼失された。ヘルシンキの再建にあたって、火事の跡地に新たな建物を建築し、それまで手付かずだった景観を近代化することが急務となった。その時代に活躍したドイツ人設計士カール・ルードヴィッヒ・エンゲルは、ヘルシンキの歴史を語るうえで欠かせない人物である。ヘルシンキの街、特に元老院広場の周辺に当時建てられたものは、ほとんどエンゲルの作品と言っても過言ではない。そのエンゲル自身も銅像になっていた。

ツアーバスが最初に通ったヘルシンキ大聖堂も彼の作品である。この建物の前の広場は驚くほど広かった。エンゲルが設計したものは他にヘルシンキ大学校舎、閣議公邸、ヘルシンキ新旧市庁舎、ヘルシンキ大学図書館など数多い。しばし、車窓見学を続けたあと、トゥーロ地区で車が止まった。ここにはテンペリアウキオ教会がある。この教会は、外から見る限り出入り口と屋根しか見えないから、中に入るまで教会だあるとはわからない。テンペリアウキオ岩をくり抜いて造られたもので、ある。外側からは想像できないほど中は開放的である。天井の周辺はガラスで覆われ、陽の光りが差し込む。音の反響にも優れているようにも思われ、音楽会も時々開かれているようである。

それから10分走って、次に車を降りたのがシベリウス公園だった。今年没後50年を迎える、作曲家ジャン・シベリウスを記念した公園で、中央に管楽器を模したモニュメントが置かれている。大小さまざまだが、大きいものでは大人の頭がじゅうぶん入る直径のものがあって、頭を隠して記念撮影に興じる者もいて楽しそうに見えた。

ツアーを終えてホテルに戻り、フロントでフィンランド料理が食べられるレストランを聞く。平日だったので、予約は不要だと聞いたが、実際に行ってみると今日は予約しか受け付けないという。仕方なく退散し、近くの観光案内所へ。途中でもう一件見つけたところが予約なしで行けるのかと聞いたところ行ってみると、また予約したかと問われた。まだしていないが、今日予約できるかと問うたら、いつがいいかと聞かれたので、7時だと言った(そのとき6時55分)。すると、すぐに席を用意してくれた。どうやら、「今すぐ」でもレストランは予約するのがルールのようだ。

食事をしていたら、ものの30分ほどで満席になり、後から来た者は予約を除いて断られていた。気軽に入れるカフェがたくさんある中にあって、地元の人も頻繁にレストランで食事をするわけではないのだから、予約するのはひとつのマナーなのだろう。もちらん、予約しなくても空いているときは臨機応変に対応してくれることもわかったが。

食事を終えると既に夜8時を過ぎていたが、夏の北欧はとにかく陽が長い。あいにくの曇り空、ノルウェーのときよりは幾分暗い感じもしたが、まだまだ外を出歩ける感じがする。それでも、人通りだけは少なくなっていることが見て取れる。ウスペンスキー寺院から海沿いに向かい、また戻って、エストニアのタリンと結ぶフェリーの発着口となる港をぐるっと巡って、散策した。フェリーターミナルにカフェバーを見つけたので、休憩でもしようと思ったが、もう片付けに入っていた。

日本の都市と違って、夜遅くまでやっている店は非常に少ない。しかも、日本でいうコンビニがここにはないし、自販機のような便利なものが無い。それに代わるのは街角にあるキオスクくらいだが、夜8時は完全に閉まってしまう。ミネラルウォーターが欲しかったので買いに行こうとしたが、結局見つけられず、ヘルシンキ中央駅のキオスクでやっと見つけ、2本買った。予想外に高かったが、水なしで一夜を過ごすよりはましだと思い、ホテルに持ち帰った。陽が長い割りに営業時間が短いのは意外に感じたが、夏と冬で陽の長さが極端に異なる北欧の都市ならではの生活の知恵だろうか。ホテルへの帰路を急ぎ、たまった旅行写真の整理で残りの夜を過ごすことにした。