今日は終日アテネ。ここへ来たからにはアクロポリスに行かないわけにはいかない。言わずと知れた、ギリシアを代表する世界遺産である。それにしても今日は暑い。手元の温度計は朝なのに既に40度近い。アクロポリスへは昨日利用したメトロの路線に駅があるというので、当初は駅を目指して歩いていた。すると、大通り沿いの水色の周遊観光バスの案内板を見つけた。
アテネ観光公共バス路線、通称400号系統は旅行者にとってうれしい路線である。料金もメトロより格安だし、市内の観光地を効率よく回ることができる。路線図を見ると、アクロポリスに続いていたし、時刻表の表示ではあと5分待ったらバスが来ることになっていたので、そのまま待つことにした。ほどなくバスがやってきた。ラッキーだ。

正午頃、アクロポリスの入り口に到着。丘の上を見渡すと、パルテノン神殿と思われる遺跡を発見した。距離は思ったよりも遠そうだ。日射病になってしまっては元も子も無いので、いったん引き返し、バス降り場近くの売店で帽子を買った。ゆるやかな坂を登ってチケット売り場に行く手前、日差しが予想以上にきつかったので、屋台みたいなところでサングラスを調達した。準備が整ったところで、再びチケット売り場へ急ぐ。とりあえずチケットは手に入ったので一安心。12ユーロでアクロポリスを含む6箇所の施設を回ることができる。

遺跡の中にはトイレが無いとの情報だったので、先に済ませておくことにする。そのうち、暑さはさらに激しさを増してきた。日本にあるようなじめじめとした不快感は無いもののやはり暑い。手元の温度計はゆうに40度を超してきた。チケット売り場を挟んで、通りの反対側には売店がある。そこの看板商品はフローズンレモネードだ。一杯4.5ユーロ(約750円)ととんでもない値段をしているが、あまりにも暑いので商売ができている。実際、周りを見渡してみてもパッケージを持っているものが大勢いるから、飛ぶように売れているのがわかる。こちらもたまらず買ってしまった。まずは、黄色いオーソドックスなフローズンレモネードを注文。
これまでアクロポリスは、地理や歴史の本で見ている情報しか知らなかったから、実際どうなっているのか確かめてみたかった。意外だったのは、写真で見たような、きれいな形をしていないということだ。どういうことかと言うと、近年、ここは常時工事中ということである。僕が中高生だったころに比べて、現在ではさらに老朽化しているといわれる。近年その度合いは加速しているともいわれ、修復と老朽化のスピードを競っている憂慮する実態となっている。

パルテノンは、まるでギブスで固定された患者のごとく、痛々しいほど鉄筋で周囲を覆われている。周辺にはオリジナルの大理石よりもより白味を増した、コンクリート製の巨石が整然と並んでいる。おそらく、今後の修復で使用されるものではなかろうか。実は、世界遺産の修復にはルールがあるようだ。当初からあるオリジナルと、オリジナルが欠けた部分を修復するのに新たに付け加えられた部材とを明確にするのが必須になっているようだ。素人目には、修復時にオリジナルと同じ大理石を用いればよいのにと思うが、これは、後世の研究家がオリジナル部分と修復部分を区別するのに必要なことだという。だから、茶色味を帯びた大理石と、白いコンクリートのモザイク模様になっているのは、欠けてなくなった部分を修復していることの証拠になるのだ。

アクロポリスの丘からは、アテネの市内を一望できる。今日は空があまりきれいではなく、スモッグが掛かっているように見える。町を見渡すと、茶色い屋根が多く、建物の側壁の白色とのコントラストが妙にマッチングしているようだ。アクロポリスからの眺めを写真に収めてから、他の遺跡群も順に回っていった。最後に、もう一度パルテノンに戻って写真撮影を完了、先ほどの入り口部分に戻る。帰りの階段は少し怖い。行きの時よりも急に感じられるし、大理石は想像以上に滑る。急いで駆け下りると危険だ。足を滑らすと思わぬ怪我をしかねない。慎重にゆっくりと皆降りていた。
丘の上には2時間ほどの滞在。遺跡群はアクロポリスの丘だけではなく、周辺の平地にも点在している。今度は、一般の住宅を縫うように移動する。住宅地と遺跡。一見不釣合いなように感じられるが、ここでは日常に溶け込んでいる。もし、アクロポリス側から降りるルートではなく、平地から逆方向にアクロポリスへ行くとなれば、途中で遺跡があるとはとても思えない。少しおなかが空いたところで、うまく商店街が見つかった。一角にある食事処で休憩することにする。
地元の料理でおすすめを聞くと、ギリシアの郷土料理「ユベチ」に似たお肉のグラタンを薦められた。こんなに暑いのに何を!と思うかもしれないが、これが実にうまかった。ただ、暑いのは避けようもない。結局ミネラルウォーターを2つも追加注文してしまった。

食事を終えて、周辺の遺跡を見学中、そこに倒れこんでいる犬を見つけた。今にも踏んづけてしまいそうになったがぴくりとも動かない。相当バテているとみた。こんなやる気のなさそうな犬ははじめて見た! 犬もバテバテのアテネの昼下がりである。この後、三たびチケット売り場のある広場へ向かう。目的は今日3回目のフローズンレモネードだ。これで赤いイチゴ味と、橙色のオレンジ味、黄色のレモン味の全3種を完食だ。フローズンドリンクだけで計13.5ユーロ也。チケット代より高くついた。予定外の手痛い出費!