同じホテルで2泊するので、大きな荷物を部屋に預けたまま、リュックに最小限の荷物だけを入れて身軽にしておく。まず、駅前のニューススタンドで市街地の地図を買った。ガイドもいない完全な単独行動だから、街歩きをしている最中に道に迷っても、ちゃんと戻れるようにするための一種の保険のつもりで。
まずは昨晩降りたバーリ中央駅前の噴水広場からど真ん中を北上し、バーやショップが立ち並ぶ歩行者向けのメインストリートを歩く。早速小さな電気屋を1件見つけた。デジカメはあったが、種類が少なく話にならない。大きな道路に行けば、大型スーパーのようなものがあるかも知れないと期待し、先ほどより東側の車道を北上。それでも電気屋はおろかショッピングセンターも見当たらなかった。昼にはアルベロベッロに移動したいので、徒歩圏内が限度。あと1時間歩いても見つからないなら、ムービーのカメラ機能で代用し、明後日にでも空港で買おうと決め、望みをつなげる。
結局、町の北部、港より多少南よりの大通り沿いに、同じメーカーの機種が置いてある店を見つけた。3件目でのヒットだ。先代のデジカメは出発前に日本で買ったもので1000万画素の最新機種だ。今回見つけたのはその型落ちで700万画素だ。しかし、それでも299ユーロ(約5万円)もする。先代よりバージョンダウンしているのに1万円も高い。とりあえず中身を見せてもらい電池入れを確認したところ、今の電池がそのまま使えることが分かった。電源を入れても問題なく動いたので、ここで手を打つことにした。痛い出費だったが、欲しかったものが手に入って一安心。おまけで青いカメラケースを貰った。
ホテルに急いで戻り、部屋に空箱を置いて本体だけを持っていく。ヨーロッパ仕様だから充電器のコンセントの形状が違う以外はほとんど同じ。しかし、操作マニュアルは言語別に5冊もあった。あとで本体を見て高い値段の理由が分かった。実は日本製で、輸入品だったのだ。
意外にも降りる人は少なく、半分以上の乗客はそのまま乗ったままだ。田舎の小さな駅舎、世界遺産の最寄り駅とは思えないほど静かに佇んでいる。ここからは石造りの屋根は全く見えなかった。飾り気の無い広場から坂を上がってゆく。昼下がりの通り道、長いバカンスに入っているのか昼休みなのか分からないが、通り沿いのお店はどこもやっていない。10分ほど歩くとランドスケープになるだろう大聖堂が見えた。そのすぐ脇を歩いていく。ひとまず、世界遺産の目印を見つけたので、その施設に入ってみた。そこはトゥルッリとよばれる石造りの円錐形の屋根が複数ある、この場所の伝統的な家々の暮らしぶりを紹介した小さな資料館だった。
お昼どきにトゥルッリの中で営業しているピッツェリアに立ち寄って、食事をした。意外だが、アルベロベッロではJCBカードが使える店がたくさんある(今回、自分は持って来なかったが)。そのような店には、青地に黄色で「いらっしゃいませ」と書かれたステッカーが貼っている。日本人の観光客を呼び込もうと商魂たくましい。このピッツェリアの入り口付近にもステッカーが貼ってあったので、運がよければ日本語のメニューくらいは置いてあるのではと期待して入った。けれども、それは見事に外れた。
こういうときは適当に注文するのが鉄則。前菜1品とメイン1品を何も考えずに選んだ。どちらも冷製のトマトベースで、見事にかぶっていた! 食後にエスプレッソで締めて店を出る。ちゃんと食事をするところが見つかっただけでもよしとしよう。
最後に、もう1ヶ所資料館を訪れた。何か懐かしいものを見つけた。最近は5年ほどご無沙汰しているが、かつて何回も訪れたことがある岐阜県白川村の合掌造りの写真と、そこで使われていた古い農具や生活道具がそのまま展示されていたのだ。実は両者には共通点が多い。屋根に特徴を持つ集落であること、そして今でも生活の場として使われていること、そしてほぼ同時期に世界遺産に登録されたことだ。ここアルベロベッロは1996年に、五箇山・白川の合掌集落は前年の1995年に登録されている。ある意味姉妹都市のようなものだ。思いがけない出会いをしたような気分に浸りながらこの場を去って、再びバーリに戻った。