袋ごと持って、近くの郵便局へ出かけた。日本に住んでいると、どうしても郵便局は赤だとイメージしてしまうが、これは根拠のない先入観だ。イタリアでは黄色地の丸い看板に青い文字でPTと書いてあるのが郵便局のしるしだ。平日だというのに朝から混雑している。まず、整理券をとるところから難関だ。日本でも銀行によくある整理券発行機だが、どのボタンを押せばいいのかわからない。10分以上粘った挙句、近くの人にジェスチュアしてもらい、外国(=日本)に郵便物を届けたい旨、伝えた。でも、これは序の口、ここからが本当の試練だ。
窓口でいざ郵便物を出そうとすると、郵便局員と話ができない。イタリア語をまったく知らない僕と、英語をまったく知らない局員。ジェスチュアを試みても全く通じない。沈黙の中に時間だけが過ぎていく。途方に暮れてしまうとは、このことなのかと思ってしまう。こんなやりとりを30分ほどしていると、そこに救世主がやってきた。言わずもがな、イタリア語と英語のバイリンガルだ。最初は彼女が宛名書きのボールペンが必要だったので僕に拝借しにきたので、快く貸してあげたのだが、そのうち僕が困っているのを見て、仲介を申し出てくれた。しかも、後のほうに追いやられていた行列の前に行くようにと引っ張ってくれた。まわりから見たら、知人だと思われたかも知れないが、何でもない他人同士である。
これまで、英語ができればすべてうまくいくと思っていたが、そう簡単ではないことを痛感。外国で物事を円滑に進めようとすると、できる限り現地語(あるいは公用語)が話せたほうが良いと、あたりまえの話だが改めて認識した。もちろん、行く先々のすべての言葉を習得するわけにも行かないから、英語ができることは絶対条件だ。英語ができていれば、現地語と英語のバイリンガルに出会える確率は低くてもゼロではないから、その人を介して何とかなる。が、日本語しかできなければ、日本語とのバイリンガルは極めて少なくて皆無に近いだろうから、こんな場面に遭遇したらお手上げだ。英語の必要性も改めて実感した出来事であった。
ホテルに戻るまでの小一時間、バーリの市街地を散策する。来た道から帰ろうとしたが、どこからか途中で道を間違えたようである。かなり歩いたが一向に駅に近づかない。昨日カメラを買うのに通ったときには見たことのない鉄道高架橋のところに来てしまった。いよいよ焦ってしまう。電車が出発するまであと30分しかない。このままでは危ないと感じて通りの人に道を聞いた。
午後1時42分のローマテルミニ行きの特急に乗車。行きと同じく4時間40分の工程だ。列車は25分ほどおくれてテルミニ駅に到着。事前の情報ではイタリアの鉄道はとんでもなく遅れるとあったので、1、2時間の遅れは覚悟していたが、これだけの長距離でこの遅れで済んだのは上出来だと思う。日本ではこんな気持ちになることなど考えられないが、20日も渡り鳥のような旅を続けてきて、気持ちにゆとりでも出てきたのではないかと自分で分析。今日の宿泊先は、地図のうえでは見つけやすいところではなかったが、ほとんど時間のロスをすることなく見つけることができた。方向感覚まで磨かれたのだろうか。
今日は冴えている! この2階建てバス、実はホップオン・ホップオフバスと言って、ローマ市内の主要観光施設を1周する周遊バスだ。乗客は24時間有効のチケットを買えば、途中、路線内のどの停留所で降りても、乗っても良い。もちろん、そのまま乗り続けてたら、効率よく1周することができる。
このバスは8時に駅前を出発。ベネツィア広場、コロッセオを通る。途中、ヴァチカン宮殿の手前で停車したので、バスを降りる。10分ほどしか時間が無かったので写真を撮る以外は何もできなかったが、辛うじて下車観光となる。その後サンピエトロ広場の脇を通り、帰途へ。トレビの泉の前でコインを投げる(しぐさを心の中でした)。
1時間半の行程は予想よりも早く終わった。バスの乗客は全員降りたが、その後も停車していたので、その先ツアーがあるかどうかは分からない。だが、もう辺りは暗くなっているので、そのまま乗り続けられたとしてもあまり面白くないだろう。
観光優先だったので、まだ食事をしていない。テルミニ駅を一周し、周辺で見つけたレストランで食事。僕の後に来た客はわずか1組だった。2組目は断られていたので、実に閉店間際だったのだ。ここでも運が良かった。帰りに駅構内の本屋さんで『Lonely Planet』のスペイン語(南米用)のフレーズブックを購入。今日の郵便局での1件でこりごりだったので、この後行く予定にしている南米へのフライトのお供にするためだ。
今日はいろいろあった。前半は危機の中にも幸運が、後半は幸運続きが…。今日は運が良いのか、悪いのか、さっぱり分からない1日だった。