2007年7月16日月曜日

Day5─半島を巡って(ケープポイント・喜望峰)

ケープタウン。昨日はホテルで寝ただけだから、今日が実質の初日だ。朝食を簡単に済ませ、フロントで部屋のカギを預けると、昨日のガイドが既に迎えに来ていた。握手のあと、用意してくれた車に乗り込む。ケープタウンから数十キロ南下した、ケープポイントや喜望峰へは、公共の交通アクセスが無い。慣れない道を一人でレンタカーを借りるのも不安があるから、日本にいるときにガイドを頼んでおいた。と、気付いたが、今日は一人のようだ。このケープ半島ツアー、大きなバスかマイクロバスで、複数の人と合流して観光するものかと思っていたが、実はプライベートツアーだったのだ。たくさんで出掛けて楽しいのもいいが、一人だとわがままを聞いてもらえるなど、便利なところもある。

ウォーターフロントの近代的なビルが立ち並ぶエリアを後にし、クリフトンを目指す。その間に切り立った崖を横目に見る。それから30分ほど走って、Lluandudnoで休憩。この辺りは高級マンションが軒を連ねていて、その下にはマンションに住んでいる人たちのプライベートビーチがある。このビーチは住人だけでなく、一般の人も車で出入りすることができるが、入り口のセキュリティーゲートを通るのが条件だ。はるか先に住人がひとり、飼い犬が追いかけっこをしているのが見えた。今は冬だから泳ぐ人は全く見かけない。が、夏でもこのビーチはいたって静かだと、ガイドは言った。それもそのはず、日本で言う浜茶屋のような商業施設は全く無く、本来の砂浜だけを楽しむ場所だからだというのだ。5分ほど石の階段を降りてみると、砂浜には、人よりも犬の足跡のほうが目立って見えた。
それから、M6号線を南下し、20分。港町のハウトベイに着いた。ここはDuiker島に向かう周遊ボートの発着場だ。僕を案内してくれるガイドは、南ア共和国公式のガイドとして登録されているため、旅行者を案内している限り施設料金を払う必要は無い。だが、船酔いするため、船が大の苦手なようで、ここは一人でまわることになった。乗船料25ランドを払って、船に乗り込む。約40分の短い船旅─。しばらくして、無人のDuiker島に着いた。

ここは南アフリカオットセイの生息地として知られている。コロニーには少なくとも数百頭はいた。船はそこで10分ほど写真撮影のため停泊する。確かに船は相当揺れている。僕の傍らにいた乗客は滑ってこちらに寄りかかってきた。僕もデジカメを危うく落しそうになった。周遊を終えて、再びハウトベイに戻ると、一瞬、足がよろけそうになったが、すぐに持ち直し、港に足をついた。ケータイが無事であることを確認したとき、久しぶりにアンテナが3本立っていることに気付く。早速友人に電話する。現地時間は朝11時。はるか彼方の日本は午後6時。モバイル事情が決して良いとは言えないこの場所で、このチャンスを逃すと、次はいつ連絡できるかわからないからだ。同じく両親にも連絡をとろうとしたが、このときは通じなかった。そして、民芸品売りのテントを散策した後、ガイドの車に乗る。

近くの魚加工工場を回ってからフローラベイを経由し、チャップマンズピーク・ドライブ(通り)に出る。絶景を間近にしつつ、Noordhoekへ、そしてM65号線を南下して30分くらいでオーストリッチファーム(だちょう牧場)に着いた。周りの景色に溶け込まず、何か牧歌的な雰囲気を漂わせている。庭には自分の背丈をはるかに超えるだちょうが2、3羽、迎えてくれた。1996年に建物が完成したという、あたらしい観光スポット。家内工業のようだ。中では天然のオーストリッチでできたさまざまな商品、それに巨大な卵の殻でできたランタンなどを手に取ることができる。僕は何も買うことはしなかったが、目だけでも十分楽しめる。

牧場を後にし、数分走ると、喜望峰国立公園への入り口のゲートに差し掛かった。そこから20分ほど南下し、スミッツウィンケル湾が見える崖の上で車が止まった。地元では絶景ポイントで有名なところだそうだ。さらにケープポイントを目指し南下を続ける。途中で奇妙な光景に出くわした。道路の左右の景色が全然違うのだ。左側は緑の木々で覆われていたが、右側は木一つ無い。枝が僅かに残っているだけだ。ガイドの説明によると、ここではわずか2ヵ月前に森林火災があったようだ。この道が火の行く手を遮ったとのことである。そこから15分ほど走ると、ついにケープポイントが見えてきた。

ケープポイント、それに喜望峰は、実はアフリカ大陸の最南端ではない。だが、実際、最も有名な場所であることには間違いは無い。小高い山の上に現在は使われていない灯台が見えた。ガイドは歩いて登るか、ケーブルカーで行くか選択するよう尋ねたが、迷わず歩いていくことに決めた。この灯台が現在使われていないのには理由がある。あまりにも高台にあったために、悪天候だと霧が立ち込め、船から見えづらく灯台の役目を果たさないからだ。実際、1911年にかくいう現象が起き、船が岩に激突、沈没し、4人が命を落す事故があったそうだ。現在ではさらに低地に移動しているが、そこは観光客が簡単に訪れることができない。

古いほうの灯台は観光地化していて、お決まりのように世界各地の都市を指す看板が備え付けられていたが、いたずらでぐるぐる回している輩がいて、実は正確な位置を示していない。ただ、一応記念撮影を撮っておいた。今度は、ここから喜望峰まで向かう。車で行くとものの数分で行けるが、歩くと45分かかるという。折角だから、今度も歩いていくことにした。デジカメとムービーを手に、砂利道を進める。途中、撮影をしながら移動したため、少し遅れて喜望峰に着いた。再び記念撮影のあと、今度はケープ半島を北上する。

少し走ると、野生のバブーン(猿の一種)の群れに遭遇した。道のど真ん中に居座り、まるで自分たちの縄張りだと主張するように…。ひょっとすると、彼らの縄張りを壊して道を作ったのは我々人間かも知れないと思いながら、辛抱強く待ち続けると、気が通じたのか、やっと退散してくれた。

半時間ほど行くと、ボルダーズといわれるところに着いた。アフリカペンギンの生息地として有名なエリアだ。ビーチには、これまた数百羽のペンギンを見ることができた。このビーチはペンギン専用。人間は、1、2メートルほどの高さにある、木製の高架橋から出ることはできない。午後4時、ちょうどペンギンの夕食どき、一日2回しか見られない、親ペンギンたちが狩から帰ってくる場面に出くわした。今日はラッキーだ。ペンギンコロニーを後にし、南ア海軍の拠点で有名なサイモンズタウンを経て、6時の日没に間に合うようにシグナル・ヒルに向かう。

本当はテーブルマウンテンに行く予定だったが、最終のロープウェーが既に出た後だったので、これは明日の楽しみにとっておこう(実は、明日はガイドを頼んでいなかったが、このとき、明日もガイドしてもらうことを即決した)。代わりに、外からテーブルマウンテンを望むことができたが、夕日に照らされて輝いているように見えた。シグナル・ヒル─5時44分、数分後に迫った日没を控え、海に吸い込まれてゆく太陽の最後の輝きをカメラに収めた。その帰り道、3年後のサッカーワールドカップの会場となるだろう、スタジアムがつくられる様子を眼下に見た。

ホテルに戻ったのは午後6時半を過ぎていた。一日中楽しんだから、もう外に出る必要も無いと思っていたが、宿泊先の周辺は夜も安全だから外食でもしたらどうかとすすめるので、有名なシーフードをいただくことに。ホテルがすすめたのは、ホテルが用意するマイクロバスで行けるショッピングモールにあるレストランだった。

そこで、一番安いワインとサラダ、スープ、一品を頼んだが、その量の多さにはたまげた。はっきり言って、最初のサラダだけでも「ごちそうさま」だった。ボールのような深皿に一杯のサラダにボイルえびが10個。これだけでイヤな予感がしたが、次はえびでダシをとった濃厚なクリームスープ。大きさはこれまたボール大。何とか完食したが、最後に極めつけの一品が待っていた。カラマリ(甲イカ)のソテーだ。4割ほど頂いたところで(それでも10数杯は食べている!)ついにギブアップ。

何でこんなに多いんだとウェイターに言うと、「ケープタウンだからね」、と当然のような返事。確かに、そこらを見渡すと他のお客さんは最低でも2人以上で来ている。平均は4、5人ってところだ。これぞ一人旅ならでの思わぬ試練だ。とは言うものの、味は申し分無かった。最後に食後のコーヒーを一杯。これだけは外せない。一緒に薦められたデザートは丁重にお断りさせていただいた。夜景を楽しむのはほどほどに、マイクロバスでホテルに戻った。

明日も、もう一日ケープタウン。どんな驚きが待っているだろう?