2007年7月19日木曜日

Day8─ゴールデンルートを行く(オスロ→ガイランゲル)

朝8時07分のオスロ発トロンハイム行きの特急に乗る。都会のオスロを出て30分も経たないうちに、牧歌的な雰囲気を漂わせる田園地帯に入る。同じような景色が延々と続くのに、不思議と見飽きがしない。約4時間で乗換駅のドンボースに到着。すぐ隣に待機していたオンダルスネス行きの特急に乗り換える。2両編成だったから、既に座席は完売。出発前に日本で座席を予約しておいて正解だった。

そこからは1時間半弱、列車はほぼ定刻の午後1時半にオンダルスネスに着いた。実はこの旅の中でもっとも不安に感じてたのはこの先の旅程である。出発前にガイドブックやインターネットなどで完璧な調査を試みたが、オンダルスネスからガイランゲルまでのバスの時刻表が、どこを探しても見つからない。しかし、ガイドブックやインターネットの観光案内ではバスルートが存在することだけは記載してあった。結局出発までに確証を得られずないまま出発となった。

しかし、駅に着くとそれは杞憂であることがわかった。駅には観光案内所が併設されていて、そこで容易に時刻表を手に入れることができた。何とかなりそうだ。ガイランゲル行きのバスは午後5時半に出るとのこと。まだ2時間はある。再びインフォメを訪ね、1時間ほどで行けるハイキングコースはないか尋ねたところ、ちょうどいいルートを紹介してくれた。ここでしばらく散策を楽しむ。ここに来ている人たちはみんな観光客、気軽に挨拶をしてくる。駅まで戻る道すがら、「ハロー!」と声をかけると、相手は「ボンジュール!」と声を掛けてきた。すかさず、「ボンボワイヤージュ(いい旅を)!」をコトバを返す。

バスは定刻の午後5時半に出発し、「ゴールデンルート」と呼ばれる絶景ルートを走る。このバス、観光バスではなく普通の路線バスだが、途中何度も写真撮影のための休憩がある。乗客のほぼ全員が観光客だからほとんど観光バスである。乗客はわずか10名。それでいて料金は200ノルウェークローネ(約3,000円)ほどだったから、採算がとれているとはとても思えない。どうしてこんなに乗客が少ないのかといえば、家族客はたいていレンタカーを借りてフィヨルドを観光することが多いからだ。最大でも1日2本しかない公共交通機関では不便なこともその理由かもしれない。あるいは、日本ではまだ主流とはいえないが、アフリカでもここでも結構キャンプを張ったり自炊して費用を浮かす旅行スタイルが欧米では多いようだ。

結局バスの乗客10人のうち、一部がルート途中の宿泊施設で降りたほかは、大半が終点のガイランゲルまで乗っていた。だから、最後まで座席の両側を独り占めできた。快適、快適。出発して15分ほど、滝が流れるポイントで最初の写真撮影休憩。30分位たって、今度はこれまで走ってきたつづら折の道を一望できるポイントに近づいた。まさに絶景。

6時を10分くらい過ぎた頃に、峠越えのところでまた撮影休憩があった。ラウマとノーダルのふたつの群境のところだ。ここあたりは標高が高く、真夏というのに山頂はうっすら雪化粧している。万年雪だ。撮影のためにバスを降りると、冷たい風があたって寒ささえ感じる。オスロのホテルで大きな荷物は預けておき、小さなリュックだけでここに来たが、念のためノースフェイスのグレイのジャンバーだけはしまわずに着たままにしておいた。この選択は正解。真夏の北欧は真冬のアフリカより寒い!

午後7時、フィヨルドの連絡船に乗るため、Eidsdalで全員降りる。バスはここでいったん終わり。対岸の町までは船で移動し、別のバスに乗ることになる。しばらくすると船がやってきた。自分たちの乗ってきたバスは船に乗ることはないが、桟橋に到着した船には自家用車や他の路線バスがそのまま乗ってやってきた。

フィヨルドは観光客には魅力的なものだが、実際そこに住んでいる人たちにとっては厄介な存在でもある。とくに自動車で移動するには制限が多すぎる。複雑な地形も無制限に道路がつくられるはずはないから、対岸の町へ出るだけでも、道路だけを頼ったらとんでもない距離を走り時間も浪費する。それに、場所によっては途中で道路が寸断されているところもあるから、まったく行き着くことさえできないこともありうる。連絡船はそういうときに無くてはならない存在だ。ノルウェーのフィヨルド地帯では、このような車が乗せられる連絡船のルートが縦横無尽にある。日本ではちょっと想像しにくい光景だが。15分もすれば、対岸の町の桟橋に着いた。ここでガイランゲル行きのバスを待つ。あと1時間もすれば、目的のガイランゲルに着くだろう。

7時半前にバスが到着。皆乗り込んで本日最後のバスの旅。20分ほど走ると、ガイランゲルフィヨルドを見渡すビューポイントに停車した。最後の撮影タイム。あとは終点まで一気に下ってゆく。午後8時10分、バスは終着のガイランゲルフィヨルドに着いた。ちょうどオスロを出て12時間だ。前日のケープタウンからロンドンまでも掛かった時間と同じくらいだったから、こちらではスロートラベルといったところだ。それから宿泊先までは徒歩で移動。チェックインを済ませて部屋で山の谷間から沈みゆく陽の光を眺める。午後8時半のことだった。

太陽が沈んでもまだ明るい。ホテルにカギを預け、まだ店が開いていないか確かめる。「ロンリープラネット」にも紹介されていた軽食屋に入り腹ごしらえをしたあと、少しばかり付近を散策して今日はこれでおしまい。